化学コース・元素分析室のご紹介
8号館384号室 内線3463
元素分析室では、有機化合物成分主体の化学物質に含まれるC、H、NとS、Oの5つの元素を測定しています。有機化合物は主としてC、H、Nを構成元素としているものが多く、これらの構成元素の測定結果と残りの重量配分より、化学物質中の元素組成比を知ることが出来ます。元素組成比と分子量より、化合物の組成式も推定できます。主要な学術論文への投稿では、特定・新規な化合物に関してC、H、Nの元素分析値の記述が要求されます。化合物の元素分析を学内で処理できることの利点は、不安定な化合物、例えば、反応の中間生成物に関しても迅速に組成を知ることが出来るので、有機物や錯体の合成を行う上で、大変有利なのです。本学の装置は64試料分のオートサンプラーを備えているために、一度に多数の試料の分析が出来ます。元素分析はC、H、N、S、Oの他にハロゲン、その他の金属・非金属成分の分析が必要であり、元素分析室の更なる充実が今後の課題でもあります。

1.使用機器
分析装置 エグゼタ- アナリティカル社製 CE-440F 

 試料(有機化合物、天然物等)を、装置内部に触媒を充填した高温の反応管内で完全燃焼・分解し、主構成元素であるC(炭素)、H(水素)、N(窒素)をCO2(二酸化炭素ガス)、H2O(水蒸気)、N2(窒素ガス)に変換、これらの三成分を三つの熱伝導度検出器で順次定量し、試料の構成元素C、H、N含有量を測定します。
 
 別途、触媒種を変更しS(イオウ)も同様にSO2(二酸化イオウ)として、O(酸素)の分析は、試料をヘリウム中で熱分解させ、成分中のO(酸素)をPt-活性炭触媒を通しCO2(炭酸ガス)として変性し、同様に熱伝導度検出器で定量します。従って、有機化合物のみならず無機物(触媒、土壌、粉塵)などに含まれる有機物、炭素分の分析にも使われます。

元素分析室のご紹介
2. 測定の依頼のしかた
(1) CHNの測定の実施日は、毎月の最初の水曜日とその日から2週間後の水曜日です。SとOの分析は、月1回、試料数が揃い次第実施します。事情により測定結果を急がれる場合は、測定日を増やして対応します。前日の火曜日までに依頼書に必要事項を記入し、試料と共に8号館384号室、化学実験機器室1の奥の部屋385b号室までお持ちください。
毎月の測定実施予定日は、月初めに研究室の先生方に連絡しますので確認してください。
問い合わせ事項がある場合は、メール等でご連絡ください。
メールアドレス : sakurai-toshihiko@jmj.tmu.ac.jp (櫻井 敏彦、当面毎週金曜日定休)

なお化学コース以外の方は事前登録(ktnomura[at]tmu.ac.jpまで)をお願いします。(2012年度より)
(2) 試料は、出来るだけ純度の高いものを、充分に乾燥させてからお持ちください。
(3) 1回の測定には、CHN、(CN)S、O の三つの分析項目毎に約2 mgの試料が必要です。各分析項目について原則1回測定して報告します。CHNとSとOを測定の場合は、合せて約7mg程度必要です。一分析項目、1mg程度でも測定は可能ですが、誤差が大きくなります。測定に際して要望がある場合は、依頼書の要望欄にその旨ご記入ください。
無機物中の有機物等の分析は、C、H、N、S、Oの含有量により必要試料量が異なってきますので、予めメール等でお問い合わせください。
(4) 液体試料の場合、Sn又はAg製の小容器に取り分ける際に、毛細ガラス管やスパーテル等を使用しますが、それらへの付着残が出ますので、少し多めに試料が必要になります。
(5) 試料容器には、試料記号名(略称で可)を記入したラベルを貼り付けてお持ちください。
(6) 光に敏感な試料は、遮光ビンかアルミ箔で包んでお持ちください。爆発性があると判っている試料は、燃焼管を破損するおそれがあるので、測定は出来ません。

3. 測定結果の報告
分析終了後、分析担当者から依頼者に電話しますので、報告書と残った試料・試料容器の受け取りをお願致します。

4. よくある質問
(Q1) 元素分析装置の測定原理を教えて下さい。

 Pregl-Dumas法を基本原理とした方法です。 試料物質は、C,H,N,O,S,X(ハロゲン),M(その他の元素)の一部ないし全部で構成されています。C,H,Nの同時分析の場合、これらを酸素中で950℃〜1000℃で燃焼しヘリウムガスをキャリヤガスとして酸化触媒を通過させ、CO2,H2O,NOx,SOx,X2,MOxなどに分解ないし酸化し、この内、MOxは主に固体酸化物として燃焼残(灰分)となり試料ボート中に残り、SOx,X2は、ガス体で燃焼管内のAg網やAg化合物の除去材でトラップされ、NOxは、還元銅でN2に還元され、残存酸素は、還元銅で酸化銅として捕捉されます。

 従いまして、燃焼部-除去剤-還元部を通過したガスは、ヘリウム中にCO2,H2O,N2を含む混合ガスとなり、そのガスはH2O吸着剤を通りH2Oが除かれ、ヘリウム中CO2,N2ガスの混合ガスになります。このH2O吸着層の通過前後のガスを一定量の電流がながれたブリッジ回路上に通し、ガスの熱伝導度の差によるブリッジ回路上に出来る電流差を検出し、予め測定しておいた標準試薬でのその信号差とH濃度との検量線からH濃度を定量します。次にヘリウム中のCO2,N2ガスを含んだガスは炭酸ガスの吸着剤を通り、同様に炭酸ガスの吸着層の通過前後のガスの熱伝導度差によるブリッジ回路上の電流差を検出し定量されます、最後にヘリウム中のN2ガスとHe成分のみのガスの熱伝導度差によるブリッジ回路上の電流差により、N2の定量を行います。この様に混合ガス中から一部の成分を取り除く前後のガスの熱伝導度差を利用してブリッジ回路上に出来る電流差を検出する方式を差動型熱伝導度検出法と言います。

 試料中の(CN)Sを測定する場合は、SOxとして、上述の様にSOxの吸着剤を代わりに置き、そこの通過前後のガスの熱伝導度差を利用し、上述のHを検出する差動型熱伝導度検出器を使って測定します。酸素(O)は、試料をヘリウム中で熱分解し、そのガスをPt-活性炭触媒を通し、CO2(炭酸ガス)として同様に、差動型熱伝導度検出器で定量します。
(Q2) この元素分析装置では、どんな分野の試料物質が分析できますか。

 試料物質を純酸素下、950℃〜1000℃の高温加熱炉で加熱燃焼し、C、H、N、Sの測定対象成分がガス体となるものであれば、色々な分野の試料物質を分析できます。応用分野としては、

1) 医薬品や化学工業製品の研究・品質管理分野
2) 石油、重油、石炭、コークスなどの燃料研究・品質管理分野
3) バイオマス利用研究
4) 土壌、底質、汚泥などの環境分析
5) 海水、河川水、湖水中の浮遊物質などの分析
6) 大気浮遊粉塵物質における有機・無機炭素の分析
7) 化粧品原料の分析
8) Si化合物の分析

などです。
(Q3) 分析装置の精度はどの位ですか。

 CHNの分析では、絶対濃度±0.3%です。SとOの分析では、絶対濃度±0.5%です。

 試料が有機化合物ですと、炭素(C)の含有量が高く、水素(H)や窒素(N)は低い(一桁低い試料が多い)ので、相対精度としては、炭素(C)が小さくなります。

 依頼試料の実績から主に試料の炭素(C)含量は、50%〜70%です、例えば、理論計算値の炭素(C)含量が、60%近くの試料物質を測定する場合ですと、絶対濃度±0.3%は、±0.3/60で相対濃度で±0.5%になり、試料の純度を99.5%まで上げないと理論計算値と合わない事になります。従いまして試料に不純物や溶媒が残っていると絶対濃度0.3%以内に入らないので充分な精製と乾燥が必要です。
 試料に炭素(C)濃度の低い不純物、溶媒などが含まれていれば、炭素(C)の測定結果が低く出ますし、炭素(C)濃度の高い不純物、溶媒などが含まれていれば、炭素(C)の測定結果が高く出ます。

(Q4) 分析に影響を与える成分元素がありますか。

 PはP2O5になり、水を補足または、脱水するためにH値に正、負の誤差を与える場合があります。 Fは、燃焼管などとSiF4を生成して、分析値に誤差を与えます。

 その外、 Sc, Y, V, Hg, B, Tl, Ge, Pb, As, Sb, Bi, Teなどは、燃焼管、試料ボートを損傷し、充填剤を被毒するなどの影響が有ります。この対策として、試料ボート中で試料物質にWO3を添加して分析する場合があります。酸素(O)の測定の場合、ヘリウム中高温で試料から酸素を追い出しますので、錯体や無機物と有機物の混合組成物が試料の場合、酸素が金属酸化物やその他の酸化物で固定され、試料中の全ての酸素(O)がガス体として出てきませんので、正しい測定はできません。

(Q5) 元素分析についてもっと詳しく知りたいのですが、文献はありますか?

"役に立つ有機微量分析"(みみずく舎発行、編集 本大学の都市環境学部 内山一美先生 外 監修)が詳しいです。元素分析室にもありますので、見に来て下さい。